カロテノイドについて

自然界に存在する約600種類のカロテノイドのうち、私たちがとっている一般的な食事に含まれるカロテノイドは50種類から60種類といわれています。さらにそれらのカロテノイドの中で、食事に由来する25種類と体内で生成された代謝物の8種類(シス異性体を除く)を合わせた33種類のカロテノイドが私たちの血液や母乳中に日常的に見出すことができます(表1)。

表1. ヒト血清・母乳中に存在が認められる食事由来のカロテノイドとそれらの代謝物
エントリー カロテノイド類 化学クラス
食事由来のオールトランス型カロテノイド
1 α-カロテン* Hydrocarbons(カロテン類)
2 β-カロテン*
3 γ-カロテン*
4 リコピン
5 ニューロスポレン
6 ζ-カロテン
7 フィトフルエン
8 フィトエン
9 α-クリプトキサンチン Monohydroxycarotenoids
10 β-クリプトキサンチン*
11 ルテイン Dihydroxycarotenoids
12 ゼアキサンチン
13 lactucaxanthin
食事由来のシス型カロテノイド
14 9-cis-β-carotene* Hydrocarbons(カロテン類)
15 13-cis-β-carotene*
16 cis-lycopenes
17 cis-phytofluenes
18 cis-β-cryptoxanthin* Monohydroxycarotenoid
19 13,13'-cis-lutein Dihydroxycarotenoids
20 9-cis-lutein
21 9'-cis-lutein
22 13-cis-lutein + 13'-cis-lutein
23 9-cis-zeaxanthin
24 13-cis-zeaxanthin
25 15-cis-zeaxanthin
オールトランス型、シス型カロテノイド代謝物
26 3'-hydroxy-ε,ε-caroten-3-one Monoketocarotenoids
27 3-hydroxy-β,ε-caroten-3'-one(3'-oxolutein)
28 cis-3-hydroxy-β,ε-caroten-3'-one(化合物27のシス異性体)
29 ε,ε-caroten-3,3'-dione Diketocarotenoid
30 3-hydroxy-3',4'-didehydro-β,γ-carotene(アンハイドロルテインⅠ) Monohydroxycarotenoids
31 3-hydroxy-2',3'-didehydro-β,ε-carotene(アンハイドロルテインⅡ)
32 3'-epilutein Dihydroxycarotenoids
33 2,6-cyclolycopene-1,5-diol A
34 2,6-cyclolycopene-1,5-diol B
*ビタミンA活性のあるカロテノイドとして同定されています。

食事に含まれる主要なカロテノイドとしては、ルテイン、リコピン(あるいはリコペン)、β-カロテン、α-カロテン、ゼアキサンチン、ζ(ゼータ)-カロテン、フィトフルエン、β-クリプトキサンチン、α-クリプトキサンチン、フィトエン、γ-カロテン、ニューロスポレンなどがあげられます。カロテノイドを豊富に含む野菜・果物を充分に摂取している健常人の血液中にこれらのカロテノイドが一定の割合で分布していることが明らかにされています。

カロテノイドはさらに、酸素を含むキサントフィル類(含酸素カロテノイド)と酸素を含まないカロテン類(炭化水素カロテノイド)に大きく分けることができます。前者にはルテイン、β-クリプトキサンチン、α-クリプトキサンチン、ゼアキサンチンが、また後者にはリコピン、β-カロテン、ζ-カロテン、フィトフルエン、α-カロテン、フィトエン、γ-カロテン、ニューロスポレンがそれぞれ該当します。

食品とヒトの血液・組織中のカロテノイドプロフィルの比較から8種類のカロテノイド代謝物が同定され、それらの代謝物はおそらく各々の親化合物であるルテイン、ゼアキサンチンあるいはリコピンのようなカロテノイドが酸化的に代謝されて生成したものであろうと考えられています(図1)。

図1. 食事由来の主要なカロテノイドとそれらのヒト血清・母乳中の代謝変換 食事由来の主要なカロテノイドとそれらのヒト血清・母乳中の代謝変換のグラフ
ロメインレタスのような限られた食品にしか存在しないlactucaxanthinはヒト血清中でも極めて低いレベルでのみ認められますが、ルテインやゼアキサンチンと同じような代謝を示すと考えられています。それ故、このカロテノイドを代謝変換に含める場合があります。
[Khachikらのデータより引用改変]

リコピン、ルテイン、ゼアキサンチンの酸化代謝物の存在から、これらの食事性カロテノイドが抗酸化剤としての役割を果たすことが証明されています。さらにこれらのカロテノイドには、抗酸化機構に加えて、抗炎症特性、抗腫瘍促進活性も認められることがこれまでの研究結果から明らかにされています。

ヒトの血清中で同定されたすべてのカロテノイドはさまざまな組織(肝臓、肺、乳房、子宮頚部、前立腺、大腸、皮膚、網膜をはじめとする眼組織)でも生物学的に有意なレベルで検出されています。同時に、ヒトの器官・組織によって個々のカロテノイドの分布、蓄積の様式が異なっていることも明らかにされています。

このような特異的な違いは一体何を意味しているのでしょうか?

その原因を解明し、そこに適切な説明を与えるべく、世界中の研究者が日々調査を行っています。カロテノイド.infoでは、種々のカロテノイドがいかにして私たちの健やかな生活に寄与しているかについて、これまでの研究報告から得られた所見を拠りどころに、内容が正確かつ客観的であるよう務めながらお伝えしてまいります。

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